江戸城へ憶いを馳せる。
あの美しき時代へ。
幼い頃から母の隣で時代劇を観て育った。
時代劇はわたしという人間の多くの要素となっていると思う。
大人になってからは時代物の小説も時折読むようになった。
映像や小説で知る世界は事実とは少し違うのかも知れないけれど、
でも、きっとそうであったに違いないと夢想する。
江戸好きの友と皇居見学へ行くことになった。
やはりなにか特別な場所なのだと感じ、
歩いているととても気持ちが良い。
1657年の明暦の大火で焼けずに残った富士見櫓。
石垣、伏見櫓、百人番所、天守閣の石垣、大奥のあった場所は広い芝生の庭になっている。
大手門、桔梗門、坂下門、桜田門、半蔵門、北桔橋門、平川門。
門扉を撫でて、時の長さに溜息が出る。
わたしがその時代に在ったなら、
きっと長屋住まいの貧しき町娘で、
城下から見上げる江戸城に憧れを抱いたことだろう。
お江戸を想って、うつらうつら。