東京タワー。

小さい人と出掛けると、大人だけでは通り過ぎてしまう光景を見せてもらえることがある。
くっついて歩いて得をする。

その日は、カナダから帰国していた姉を迎える日だった。
30数年前、彼女はわたしの姉になった。
母の親友夫妻である小父小母が知人から紹介されたお嬢さんで、
東京の大学に入る為に今治から東京へやって来た。
背が高くて、目が大きくて、留学経験があり英語が話せて、社交的で、
とにかくひとつ上とは思えない魅力を放っていた。
聞けば東京で暮らしたのは僅か3年だったと言う。
故郷の今治へ帰った彼女は、程なくして今のご主人と出逢い、
24歳で彼の国、カナダへ渡って結婚をした。
先日、片付けをしていたらわたしからの手紙がたくさん出て来たと話してくれた。
携帯電話もメールもない頃、わたしたちはたくさんの手紙のやり取りをした。
今治と東京、トロントと東京。
夏休みに、高速バスに乗って今治まで会いに行ったことがあった。
今治と東京の間を取って、京都で集合したこともあった。
彼女がトロントから予約を入れて箱根の温泉に行ったこともあった。
彼女と彼女の友人は成田から温泉に直行した。
その後は、彼女が今治への里帰りの前に東京を通過する時に時間を取ってもらって、
ホテルで会ったり、みんなで食事をしたり、こう思い返すと結構会えている気がする。
最近はLINEでビデオ通話をするので、顔も見られて声も聞けて、離れている気がしない。
便利なものに感謝をする。

その姉が、数年振りに東京に帰って来た。
正しくは、二日ほど立ち寄った。
折良く小父小母の金婚式のお祝いも兼ねて、みんなで懐かしい中華料理店で円卓を囲んだ。
数年前のことも、30年前のことも、全てが今に繋がっていることが不思議でならない。

食事を終えて、小父の運転で都内をドライヴ。
スカイツリー、浅草、東京タワー。

遠くに見えていたスカイツリーが建物に隠れて見えなくなり、
信号を曲がると突然目の前に現れてみんな大喜びだった。
小父の心憎い演出である。

わたしたちは昭和の子なので、やはり東京タワーの方が人気である。

遥かにスカイツリー。

東京湾、レインボーブリッジ、飛行機。
旅気分。

散々写真を撮って、お土産を買って、アイスクリームを食べて、外に出たら夜になっていた。
やっぱり東京タワーは良いなぁ。
文房具好きの息子たちにお土産を買うと言う姉と銀座のITO−YAの前で別れた。
また、暫く会えないのか、淋しいなぁ、と思う。
でもLINEがあるから顔見て話せるもんな、とも思う。
でもやっぱり、一緒になにかを見て同じ場所で同じ時間を過ごすことが、
会うってことなんだよな、と改めて思った一日だった。

後日、里帰り中の姉から「せとか」が届いた。
大好物なので、わたしは毎日美味しく彼女を憶う。

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